GINGA MAGAZINE

EFRICA×南部鉄

  • 2022.03.23
  • PRODUCTS STORY

EFRICAの中嶋です。EFRICAの始動から約1年。いよいよ南部鉄製品についてお話しできる日が来ました。岩手を代表する南部鉄製品は当初から一番の目玉として構想の中にあり、EFRICA立ち上げ前より、県内の工房を訪ね歩き、製品の製造先を探していました。その中でたどり着いたのが奥州市水沢の及富さんです。私を出迎えてくれたのは専務の菊地章さんと息子さんで次代を担う海人さん。具体的なカタチ、ギミックをプレゼンすると、寸法がわかればすぐにサンプルを作りますよと。こちらが拍子抜けするほどのフットワークの軽さに驚きを隠せない私に、うちとしてもアウトドア関係はやってみたかったと後押しまで。まさに渡りに船、二日後に私から案の寸法を連絡しサンプル造りが始まりました。


 


及富さんといえば、ゴジラやザクの鉄瓶製作などサブカルチャーへの理解もあり、最近では若手職人さんのアイデアから生まれたアナログレコードのスタビライザーやエフェクター作家の福嶋圭次郎さんが手掛ける南部鉄エフェクターなど音楽との関りも話題になりました。余談ですが、福嶋さんもスーツケースひとつで関東から飛び込みで及富さんを訪問し、2週間後には住み込みでエフェクター製作を始めたそうです。新しいアイデアに対しての間口の広さ、チャレンジ精神も及富さんの魅力のひとつだと感じています。


昨年より始まったサンプル造り。最初に取り掛かったのがスキレットです。カタチは角型で、2枚のスキレットが合わさる造りになっています。それぞれがスキレットとして独立して使える他、合わせれば挟み焼きにすることもできます。そのまま炭や焚き火の中に豪快に突っ込めるワイルドなアイテムです。ちょうど食パンがハマるサイズですので、ホットサンドを焼くのにも適しています。焼くときにロックせずスキレットの重みでプレスをかけるため程よい圧を掛けながら調理でき、パンの耳を圧着させないのでクラブサンドのイメージで後からフレッシュな野菜をサンドできます。鉄の重さをメリットに転換しており、その形状からダッチオーブンのように上に炭をのせた調理も可能です。EFRICAオコゼロゴと及富さんの名がデザインされています。


今後のEFRICAの製品においても欠かせない存在となるオコゼ。マタギが御守としてオコゼの干物を持ち歩いたという話をしたときに専務からぜひオコゼで鉄玉をやりましょう!と。それで決まったのがオコゼ鉄玉です。本物を観察し、リアル半分、干物感半分に仕上げました。こちらの方がスキレットよりも先にリリースできるかな?と思います。お鍋を作るときやごはんを炊くときに入れる本来の鉄分補給としての使い方の他、アウトドアではメスティンやシェラカップでごはんを炊くときのフタの重しとして使えます。ブサイクながらも愛らしい姿なのでソロのテーブルにちょこんとのせておくだけで雰囲気が出ますし、EFRICA的な意味合いである御守にもなれば…という面白い作品です。


南部鉄といえば…頭に浮かぶには鉄瓶かと思います。海人さんからケトルはどうでしょう?と提案をいただいたのですが、その時点で海人さんの中ではおおまかなカタチがすでにイメージされていて、鉄瓶でありながらアウトドアケトルを思わせるフォルムを見せられたとき、ふたつ返事でやらせてくださいと答えました。スキレットや鉄玉と同じく及富さんと共同開発ではありますが、EFRICAモデルは持ち手となる“つる”の部分がトライポッドなどで吊るしやすい形状になる予定です。注ぎ口からの湯量にもこだわり、珈琲を淹れるときにもやさしく注げるようになっています。鉄瓶のもつ機能美がアウトドアというフィルターを通しても薄れずに上品な佇まいとともに表現されています。製品という前に作品。岩手の伝統工芸とコラボするモデルには歴史と作家さんの想いが詰まっています。


富が及ぶと書いて及富、我々EFRICAも岩手意味するEFとスペイン語で富、豊かを意味するRICAと合わせてEFRICAとしています。これもなにかの因果と感じております。及富さんとの1年間。かなりのスピード感をもって進んできました。そこに妥協などなく、職人の熱意と作品と真剣に向き合う仕事で生まれたスピードでした。良いものが生み出されるまでのいくつもの工程とそこにかける職人の想い、仕事を目の当たりにし、やって良かったと心から思うことができました。金型が完成し、ひとつずつ作品としての命が吹き込まれ皆様にお届けするまであと少しです。EFRICA×及富。2022年リリースです。今しばらくお待ちください。


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